【Q&A】子なし夫婦で片方が先だった際の相続
子供を持たず夫婦だけで暮らしていましたが、配偶者が死去した際には、親兄弟にも法定相続権があると知りました。
二人で必死に築いた財産を、親や兄弟にも分け与えなければならないのか?配偶者に全額わたる方法はないのでしょうか?結婚当初は、子供はそのうち授かるだろうと思っていました。しかし、なかなか妊娠せず、仕事もおもしろくなり、「そのうちに…」と考えているうちに、あっという間に年を重ねてしまいました。もうこの先、子供が生まれる可能性は低く、配偶者も「別に、二人だけの生活で楽しいから」と言ってくれています。お互いに仕事をしてもいるので、貯金もそこそこあります。ただ、心配の種は、どちらかが先に亡くなってしまった場合です。ずっと、配偶者が全てを相続するものだとばかり思っていました。しかし、先日、何かのテレビで、子供がいない場合には親兄弟にも相続権が発生するということを知りました。親兄弟と不仲というわけではないですが、かといって、二人だけで稼いだ財産です。自分が亡くなったら、配偶者だけに受け取ってもらいたいし、私が残された場合も、財産の一部を持っていかれてしまうのでは不安です。こういう場合、遺言書さえあれば、相続は配偶者のみにできるのでしょうか?遺言書で「全ての財産を配偶者に譲る」としておけば、親兄弟は手出しできないのでしょうか?それとも、遺言書があったとしても、防ぎようはないのでしょうか?とりあえず、早いうちに遺言書は作成しておこうと思うのですが、不安で仕方がありません。
弁護士としての助言
1 相続権と相続分
(1)相続権は,第1順位として、子供がいれば子供が相続することになります。なお,子供が先に死亡し,孫がいる場合には,孫が子に代わり相続することとなります。これを代襲相続と言います。
子供がいない場合,第2順位として親が相続人となります。親も既に死亡している場合には,第3順位として兄弟姉妹が相続人となります。
なお,配偶者は常に相続権がありますが,次に述べるとおり,相続分が定められています。
(2)子供がいる場合(代襲相続の場合も)配偶者が1/2,子供が1/2の法定相続分となります。子供がおらず,親だけの場合は,配偶者が2/3,親が1/3の法定相続分となります。子も親もいない場合,配偶者が3/4,兄弟姉妹が1/4となります。
2 配偶者のみへの相続
どうしても配偶者に財産を渡したい場合には,できれば公正証書の形で遺言書を作成することを勧めます。最近,夫婦で互いに,一方が死亡した場合,全財産を残された配偶者の相続させるという遺言を作っている方も見受けられます。但し,遺言で「配偶者に全て相続させる」としても,亡くなった配偶者の両親から,その1/6について遺留分減殺請求を求められることはあります。兄弟姉妹には,遺留分減殺請求権はありませんので,兄弟姉妹から請求を受けることはありません。