離婚に応じない夫を説得し,財産分与として不動産を譲り受けたケース
- 2017年10月16日
- その他事件の事例, 家族・親族間問題の事例
【事案の内容】
御相談者は,千葉市中央区在住の40代の女性です。夫と結婚後,女の子を授かり,現在17歳の高校3年生です。
夫のモラハラを理由に離婚を決意しました。
夫婦間の話合いでは,夫は当初離婚する理由がないと言い,離婚には応じないと話していました。
また,夫婦の唯一の財産であるマンションについて,御相談者も夫も単独で所有したいと主張していました。
マンションは,婚姻後に夫の単独名義でローンを組み,既に完済していました。登記名義は,夫の単独名義でした。
離婚に応じてもらい,マンションを財産分与として譲り受けたいとの法律相談を頂き,その後,御依頼頂きました。
当事者間の話合いでは,解決困難なケースと判断し,御依頼を受けた後,直ちに,家庭裁判所に離婚調停を申し立てました。
離婚調停においても,夫は離婚する理由はないとの従前の主張を繰り返し,マンションについても単独所有したいとの主張を繰り返していました。
まずは夫に離婚することに応じてもらうために,御相談者である妻の離婚意思が固いことを夫に認識してもらう必要があると考えました。
御相談者の離婚意思を提出書面で伝え,離婚調停の期日に御相談者である妻から調停委員の先生を介して伝えるなどしました。
その結果,数か月かかりましたが,夫は離婚すること自体には応じてくれました。
また,ひとり娘の親権者を母親である御依頼者と指定することにも応じてくれました。
もっとも,マンションについては,何度も説得しましたが,夫は翻意しませんでした。
【事案の解決】
離婚調停当時,夫は千葉市内の会社に転職していましたが,転職後の収入は従前の収入に比して約2分の1に減額していました。
夫婦のひとり娘は,離婚調停期間中に,私立大学への推薦入学が決まりました。
ひとり娘が進学する大学の学部では,国際的な視野を身に着けるため,在学中に約1年間の海外留学が必須とされていました。
大学に進学した場合,入学金や4年間の授業料等だけで約600万円が必要でした。
また,留学に要する費用は約400万円でした。
これらの学費を現金で援助するだけの資力が夫にはありませんでした。
そこで,夫に対し,上記学費を捻出するために夫単独名義のマンションを御依頼者に譲渡することを提案しました。
マンションを親権者である御依頼者に譲渡すれば,そのマンションを担保に金銭を借り入れ,ひとり娘の学費にあてることができます。
夫は逡巡していましたが,御依頼者が,ひとり娘を説得し,定期的に連絡をし,面会交流を定期的に行うこと等の約束を取り付けたことを伝えると,夫は,形式的には財産分与として,実質的には大学費用に充てるために,マンションを御依頼者に譲渡することに応じてくれました。
御依頼いただいてから,調停成立まで約1年半の年月を要しました。
【弁護士のコメント】
妻からの離婚申し出に応じてくれない夫は多いです。
当事者間で離婚する旨の合意が成立しない場合,裁判上離婚をするには離婚理由が必要です。
民法770条1項は,離婚理由について規定しています。
民法770条第1号から第4号までの理由がある場合には,妻からの離婚申し出に夫が異議を唱えることは少ないです。
しかし,いわゆるモラハラやDVなどについて,民法770条第1項第5号がさだめる「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして離婚を申し入れる場合,夫に加害者としての意識が少なく,離婚には断固応じないという態度を示す方が多いです。
このような場合には,まず,夫にモラハラやDVによって妻が精神的・身体的に傷つき,苦しんできたかを代理人である弁護士や第三者の立場にある調停委員の先生方を介して,夫に伝え,自身の行為を認識してもらう必要があります。
その上で,妻の離婚意思が固いことを伝え,離婚以外に選択肢がないことを認識してもらう必要があります。
次に,財産分与については,妻が自分のために譲り受けるというと反発する方が多いので,お子様のために譲り受けるというアプローチが有効なケースが多いです。
本来,財産分与は婚姻期間中に形成した夫婦の共有財産を離婚に際して原則として半分ずつに分けることを意味し(民法768条),その目的は,夫婦共有財産の清算の他,経済的に劣位にある一方配偶者の生活保障等にあります。
お子様の学費は養育費から捻出されるべきもので,お子様の学費の捻出は財産分与の目的ではありません。
しかし,頑なに財産分与を拒む夫の納得を得る方法として,お子様のための財産を譲り渡すという方法が有効な場合があります。
父子間の関係が良く,夫がお子様の将来に強い関心を持っている場合などです。
本件も,お子様の大学進学費用にあてるために,財産分与としてマンションを譲り受けることができました。
お嬢様にも面会交流に応じる等御協力いただき,夫の納得を得て,御依頼者が財産分与としてマンションを譲り受けることができました。
上記方法により,夫の納得を得るためには,法律知識の他,経験とノウハウが必要です。
設立以来約30年以上,千葉県のみなさまの法律相談におこたえし,御依頼をいただいてきた当事務所には,その知識,経験,ノウハウがあります。
夫が離婚に応じてくれない,財産分与を拒んでいる等のケースでお悩みの方はぜひ法律相談下さい。