離婚する時,子ども名義の預金をどうするか

◆ 事案の内容

法律相談いただいたのは,千葉県内にお住まいの40歳代の女性でした。

20年前に結婚し,12歳と6歳になる男の子ふたりを授かりました。

近時,夫のいわゆる「モラハラ」に耐えかねて,子どもふたりを連れて実家に戻り,生活していました。

離婚したいと考え,その旨を夫に伝えたところ,夫も離婚すること自体には同意してくれました。

ご夫婦には,ご夫婦名義の不動産,預貯金及び自動車等の財産はありませんでした。

もっとも,子ども名義の預金がふたり合わせて500万円(ひとり250万円ずつ)ありました。

これは,専業主婦であった御相談者が,夫の給料やボーナスから少しずつ貯金して形成した預金でした。

話合いにより,親権者(子どもふたりとも母親)及び養育費については話がまとまりましたが,子ども名義の預金500万円をどうするかで考えが対立していました。

夫は,子ども名義の預金500万円全額を自分が管理したいと主張しました。

御相談者も,全額自分が管理し,進学や進級時に必要に応じて子供たちのために使いたいと主張していました。

お互いに,相手のことが信用できないので自分が管理したいと主張していたのでした。

法律相談の内容は,子ども名義の預金500万円全額を,自分が管理するにはどうしたらよいかというものでした。

 

◆ 事案の解決

後述する【弁護士のコメント】に記載したことをご説明したうえで,親権者として適切に使用するので,管理を任せて欲しいと申し入れ,夫の納得を得るようにして欲しいとアドバイスさせていただきました。

ご夫婦の話合いでは夫の納得は得られなかったので,御相談者は弁護士に依頼しました。

弁護士の説得にも応じていただけなかったので,やむなく千葉家庭裁判所木更津支部に離婚調停を申し立てました。

調停委員の先生方にもご尽力いただき,夫の納得を得ることができ,子ども名義の預金500万円全額を御相談者が管理することで合意し,その旨を明記した調停調書が作成されました。

上記合意が成立するまでには,離婚調停申立てから約半年がかかりました。

 

◆ 弁護士のコメント

婚姻期間中に形成された預貯金は,離婚時には財産分与の対象となります(民法768条)。

預貯金が子ども名義でされていても,婚姻期間中に形成された預金であれば,子どもがアルバイトをするなどして得た金銭を預金した場合でない限り,夫婦が共同して作り上げた財産であるとして,財産分与の対象となります。

本件でも,子ども名義の預金500万円は,夫の給与や賞与(ボーナス)を原資とする預金ですので,財産分与の対象となります。

したがって,本来であれば,夫は,子ども名義の預金500万円のうち,半分に相当する250万円は財産分与として支払うべきことを請求することができたのでした。

本来,夫が請求できる250万円を御相談者が管理することを夫に納得してもらうためには,法理論が必要でした。

本件において,御相談者がふたりの子の「親権者」と指定されています。

非親権者は養育費支払義務を負います。

養育費には,毎月支払うべき養育費のほかに,子の大病や進学などまとまったお金が必要になったときに支払うべき養育費があります。

本件では,御相談者が上記後者の養育費の前払い金として250万円を請求し,この250万円に夫の財産分与としての250万円をあてるという法理論が考えられました。

このような法理論を基礎に,御相談者が子どもたちのために間違いなく適切に使わせていただくことを説明し,夫に納得していただき,調停成立に至ったのでした。

上記法理論を思いつくのは,法の専門家である弁護士として当然のことです。

さらに進んで,上記法理論を基礎に,説得,納得及び合意形成のプロセスをスムーズに進めるには,法的知識のほか,経験やノウハウが必要になります。

当事務所は千葉県千葉市で30年以上の実績のある事務所です。

この間,千葉県民の方々の法律相談におこたえし,多数のご依頼をいただき,解決に導いてきました。

その過程で形成された経験・ノウハウを皆様のケースでもお役立ていただきたく思います。