建物収去土地明渡事件 2
- 2015年03月16日
- 不動産問題の事例
◆ 事件の内容
依頼人(貸主)は,Y市内に所有している約600坪の土地を相手方に貸していました。
相手方(借主)は,この土地の上に事業用の倉庫を建設して,商品の置き場として使っていました。
ところが,平成24年1月から,賃料が支払われなくなりました。
依頼人が相手方に対し,滞納されている賃料を請求したところ,相手方の弁護士から,「現在の状況では経営が成り立たず,債務整理をせざるを得ない」という通知が届きました。
依頼人としては,今後,賃料が支払われる見込みもないので,相手方との賃貸借契約を終了させて,倉庫を撤去してもらい,新たに借り手を探したいということでした。
◆ 事件の解決
1 まず第一に,相手方(借主)に対し,賃料不払い(債務不履行)を理由に,相手方との賃貸借契約を解除する旨の内容証明郵便を送付しました。
同時に,当事者間の「契約書」に基づき,倉庫を撤去して,土地を現状に復するように求めました。
2 この通知により,法的に賃貸借契約は解除されたことになりました。
しかし,相手方(借主)は,資力もなく,倉庫を撤去することができませんでした。
そのため,やむなく,依頼人(貸主)を原告,相手方(借主)を被告として,建物収去土地明渡等請求事件の裁判を起こしました。
しかし,相手方は,諦めていたのか,裁判所に出頭しませんでした。
その結果,直ちに,依頼人(原告/貸主)の申立通りの「判決」が言い渡されました。
3 しかし,判決が出ても,相手方(借主)は,建物の収去をしようとはしませんでした。
そのため,執行官によって強制的に建物を収去してもらうため,前記判決に基づき,裁判所において,「建物収去命令申立」及び「代替執行費用支払命令申立」を同時に行い,「決定」を得ました。
この「決定」は,依頼人(貸主)の方で倉庫を収去することができ,その費用約170万円は相手方(借主)が支払わなければならないという内容の,裁判所の決定です。
4 しかし,現実問題として,相手方(借主)は全く資力がありません。
そのため,依頼人(貸主)が業者に依頼し,執行官立会のもと,倉庫を収去せざるを得ませんでした。
しかし,この手続により,依頼人(貸主)は,土地が更地となり,新たに有効利用することができるようになりました。
◆ 弁護士のコメント
裁判所の「判決」が出れば,それですべて決着がつくとお思いになっている方も多いと思います。
しかし,「債権の回収」でも,「土地の明け渡し」でも,実際に判決の内容を実現するためには,相手方が判決に応じてお金を払ったり,建物を収去しない限り,強制的な手続(強制執行)により,判決内容を実現するほかありません。
本件においても,相手方(借主)に資力がなく,判決が出ても,自主的に倉庫を撤去することができませんでした。
そのため,やむなく,裁判とは別の手続である「建物収去命令申立」を行い,その決定を得る必要がありました。
しかも,その明け渡し費用について,「相手方が負担しなければならない」という決定が裁判所から出ていたとしても,相手方に資力が無いような場合には,こちらの方で費用を負担して業者を依頼し,撤去するほかありません。
もちろん,法律的には,その費用を相手方に負担させることができるのですが,現実的には,資力がない方からお金を回収することはできませんので,やむを得ないことです。
本件においては,依頼人としては,600坪の土地を新たに貸して,適正な賃料を取ることができるようにするためにも,このまま放置することはできず,このような手段を取りました。