傷害事件
- 2015年02月02日
- 刑事事件の事例
◆ 事案の概要
依頼人であるAさんは、あるグループに所属していたところ、そのグループの後輩に傷害を負わせたということで、被害者である後輩が警察に「被害届」を出し、それによりAさんが逮捕・勾留されたという事案です。
◆ 解決内容
Aさんは被害者の方と知り合いであり、連絡先もわかっていました。
そこで、当職はAさんの弁護人として被害者の方に連絡をし、示談交渉を始めました。
被害者の方の傷害の程度やAさんが犯行を犯した経緯に照らすと、弁護士としての経験から、本件の示談金額は30万円程度が妥当であると判断し、被害者の方には、治療費及び慰謝料等として30万円をお支払いする旨、提示させていただきました。
当初は、被害者の方も30万円で示談に応ずる意思を示してくださっていたのですが、最終段階に至ってから、「50万円でなければ納得できない」という話になりました。
しかし、Aさんは、30万円以上の支払いをすることができなかったので、示談は不成立となりました。
そのため、やむなく、30万円に、傷害の日からの利息(年5分)を加えた金額を、法務局に供託しました(供託手続をとることにより、法的には事実上支払ったとみなされます。)。
示談は成立しなかったものの、当職は、この間の示談交渉の経緯を詳細に記載し、また、法務局に金銭を供託した事実を明らかにする書面を作成し、担当検察官に提出しました。
その結果、本件は不起訴処分となりました。
◆ 弁護士のコメント
弁護士を長年やっていると、被害弁償の「相場」というものが、大体わかってくるものです。
しかし、加害者側は、示談が成立しないと裁判になる可能性が高まり、また、裁判になって前科があったりすると実刑になる可能性も高く、極めて弱い立場で交渉せざるを得ません。
そのことをわかっているのか、相場以上の金額を要求してくる被害者の方もいます。
このような場合でも、依頼人(加害者)が納得して、そのお金を用意できるのであれば良いのですが、どうしても一定以上の金銭を用意できない場合には、示談は成立しません。
もっとも、示談が成立しなかったとしても、一定金額の支払いが可能なのであれば、その支払可能な金額分について、あらかじめ弁護人がお金を預かっておき、被害者の方に対して、“刑が確定した後であっても一定期間は金銭を支払います。”という申し出をしたり、あるいは、本件のように「支払可能な金額を供託する」などの弁護方針をとります。
そして、この事実を検察官に報告し、示談の一定金額を提示した上、示談のための努力をしたことを明らかにします(検察官は、この経過を有利な情状として評価します。)
したがって、単に示談が決裂したからといって諦めるのではなく、弁護士として出来る限りのことを行い、検察官に対し、その事実を報告することが重要なのです。