盗撮事件 1
- 2015年01月28日
- 刑事事件の事例
◆ 事案の概要
Aさん(男性)は、大型店舗内で、買い物に来ていた主婦のスカートの中を盗撮しました。
その結果、それに気がついた周囲の人が騒ぎ出し、Aさんはその場で現行犯逮捕され、勾留されてしまったという事案です。
◆ 解決内容
当職がAさんの弁護人になったとき、Aさんは、既に逮捕・勾留されていました。
そのため、当職は、なんとか被害者と連絡をとり、被害弁償を行って「示談」をする必要がありました。
このような場合は、担当検察官を通して、被害者の意向を確認してもらい、
被害者が「示談に応じてもよい」ということであれば、弁護士の連絡先を被害者に伝えてもらう、
あるいは、
被害者の了解を得られれば、弁護士限りで連絡先を教えてもらう
という方法をとるのが通例です。
この件においては、検察官から被害者に対して、当職の電話番号を伝えてもらいました。
その後、被害者から連絡はいただけたものの、被害者としては「慰謝料の支払いなどを望んでいない」とのことで、示談まで至りませんでした。
そのため、当職は、
・ この間の示談に向けて努力した経過
・ Aさんの勤務態度や家庭の状況
・ 家のパソコンに類似事案を思わせる写真などが一切なかったこと
などを記載した「報告書」を作成し、Aさん本人の「反省文」とともに、検察官に提出しました。
この件では、示談は成立しませんでしたが、Aさんに同一事犯を繰り返していた状況がなく、仕事や家庭生活も真面目に行っていたことに加えて、被害者の方も強く処罰を求めなかったものと思われ、不起訴処分で終了しました。
◆ 弁護士のコメント
盗撮事案では、通常は、「初めての犯行」ということはなく、家のパソコンの中に同種犯行の写真を取り込んでいる場合が多く、自宅の捜索によりパソコンを押収され、その事実が明るみに出る場合も多いです。
しかし、この件ではそのような事実はありませんでした。
また、当職の経験では、「痴漢」の場合は、身体的な接触があることから、被害者の方は慰謝料の請求をされる場合が多いのですが、「盗撮」については、そのようなことがないためか、比較的、慰謝料の請求がなされず、そのため逆に、示談を成立させることもできないということがあります。
正直なところ、弁護士の立場からみると、被害者の方には幾分なりとも慰謝料を請求していただき、示談を成立させた上で「被害届」を取り下げていただく方が、不起訴処分にしやすいです。
もっとも、盗撮の被害者の方は、非常に気持ちの悪い、不愉快な思いをしており、「金銭を要求することで、犯人と関わりを持つことになるのは嫌だ」という、複雑な思いなのだろうとも思います。