建物収去土地明渡請求事件4(調停)


◆ 事件の内容

依頼人は,千葉市内に在住の一人暮らしの高齢の女性でした。

依頼人の話では,父親の代に435坪の土地を貸し,A氏がそのうちの約100坪の部分に家を建て,家族で生活している。

しかし,その後,依頼人の父親が死亡したことから,その土地は兄妹4人で相続したが,A氏は地代をきちっと払ってくれていない。

そもそも100坪しか貸していないのに,435坪全部の土地を借りているとして使用している。

なんとかA氏に土地を明け渡してもらい,この土地を売却して,老後の資金としたい,というのが依頼人の要望でした。

(一部,事実関係を変更していますが,ご了承下さい。

 

◆  事件の解決
(1)依頼人の述べていることも,必ずしもはっきりしない点もあったことから,依頼人を申立人,A氏を相手方として,建物収去土地明渡の調停の申立を行いました。

(2)ところが,第1回目の調停において,相手方A氏の方から,この間,地代については,当初は依頼人の父親に対し支払い,父親死亡後は相続人の代表として長男に支払い,その後,長男も死亡したことから,最近になり遺産分割が成立し,依頼人と依頼人の弟がそれぞれ2/3と1/3を相続したことから,その後は依頼人にも地代の2/3を支払っていたとの資料が提示されました。
さらに,以前,父親が死亡した時点で,相続人全員がA氏に対し,435坪全体を建物所有を目的として賃貸するという内容の書面が提出され,そこには,依頼人も含む相続人全員の署名と実印による押印があり,印鑑証明書も添付されていました。

(3)このような状況では,賃料不払いによる解除や,借地権は本件土地の一部しか成立していないという主張は,到底出来ないことが明らかになりました。そのことを依頼人に説明したうえ,説得し,本件土地全体にA氏の借地権があることを前提として,底地権を買い取ってもらうか,A氏が使用している土地の部分の依頼人らの底地権と,その他の範囲のA氏の借地権を交換してもらう方向で調停を進めることに方向転換せざるを得ませんでした。

(4)その後,A氏から,本件土地全部の底地権を1000万円であれば買い取るとの提案がなされましたが,依頼人らは1200万円でなければ底地権を売らないということで,この金額の調整が話し合われていました。しかし,その後,A氏の方にも弁護士がつき,その結果,A氏の方では,底地を買い取るのではなく,本件土地を分割して底地権と借地権を交換したいとの申出がでるに至りました。

(5)依頼人らの方では,分割のうえ,底地権と借地権を交換した後,確保した土地が1000万円で売却出来るのであれば,A氏の方で提案する交換をしてもよいという結論になりました。

(6)この段階で,懇意にしている不動産業者に協力してもらい,どのように分割すれば,A氏の居住権や通路も確保され,依頼人らが確保した土地が1000万円で売却することが出来るかについて検討してもらい,さらに,その不動産業者の協力により,相手方も納得し,分割が出来た場合,当方の土地を1000万円で買い取ってくれる方も探してもらいました。

(7)このようにして,相手方が住居部分及び通路,駐車場として約120坪を取得し,一方,依頼人らが315坪を確保し,第三者に1000万円で売却することができました。

 

◆ 弁護士のコメント

(1)弁護士は,事件に取りかかる上では,まず依頼人がお話することを信頼して着手するしかありません。明らかに,依頼人の言っていることが辻褄が合わなかったり,持参した資料と話が食い違うような時は,依頼人に確認して,納得が出来た場合,受任して,事件に着手するのが原則です。

(2)しかし,依頼人の話すことを客観的に確認することが出来ず,とりあえず,依頼人の言うことが正しいものとして内容証明郵便を送付したり,調停の申立てをすることがやむを得ない場合もあります。

(3)本件などは,依頼人が高齢の女性であり,病気がちであったこともあるから,なんとか力になってあげたいと思う気持ちがあり,調停を申し立てたところ,最初の段階でしっぺ返しを受けたような感じでした。

(4)しかし,その後は,事実関係がはっきりしたことから,その事実に基づき依頼人も説得し(実際は,依頼人に思い込みもあり,説得するのはかなり大変でした。),新たな事実に基づいて話し合いを進め,適正な解決をすることが出来たと考えています。