離婚から相続へ
- 2018年08月21日
- 家族・親族間問題の事例
◆ 事件の内容
1 妻であるAさんからの依頼でした。
夫Bさんとは数年前に結婚し,それぞれ中年になっており,Aさんには前の夫との子どもであるCさんがいましたが,Bさんは結婚を機に,Cさんと養子縁組をしてくれました。
結婚後,Bさんには精神的な病があることがわかりましたが,最初のうちは特に支障なく生活していました。
2 ところが,最近になり,Bさんは,妄想が続き,「食事に毒を入れた」等と言い出したり,突然Aさんの首を絞めるという行為に出た後,自分で警察署に電話をして,警察官を呼びました。
このようなことから,Aさんについては,警察が保護するということで,警察の指導で住居が決められました。
Bさんについては,一時保護を受けた後,自宅に帰っておりました。
3 このような中で,Bさんの代理人弁護士という方からAさんに対し,「離婚調停を申し立てる」という通知がなされたため,Aさんは私の所に相談に来られました。
Aさんとしては,夫Bさんは,精神的な病があり,また,身体的にも必ずしも健康ではないことから,現在はこの間の経緯から別居しているものの,Bさんには施設に入所してもらい,その上で,Aさんが夫Bさんを介助することができれば,最も好ましいという考えでいました。
一方で,Bさん自身も,Aさんに対し,「いつ帰ってきてくれるんだ?」というような電話を入れていました。
4 そのため,妻のAさんから依頼を受けた私は,夫Bさんの代理人弁護士に,Aさんの気持ちを伝え,BさんからもAさんに対して,「帰ってきてほしい」という趣旨の電話が入ってもいるので,離婚調停の申立は考えてほしいとの依頼をしておりました。
どうも,弁護士への依頼は,Bさんのご兄弟から依頼しているように思われました。
5 このような事情の中で,1ヶ月後,夫Bさんは,脳梗塞で突然死亡してしまいました。
そのため,妻Aさんからは,Bさんのご兄弟等からも色々な攻撃があるかもしれないということで,離婚に対応する弁護士としてではなく,遺産相続についての弁護士として受任してほしいという依頼となりました。
◆ 事件の解決
1 この場合,相続人は,妻Aさんと養子となったCさんの2人となります。
養子がいない場合には,法定相続分は,妻3/4,Bさんのご兄弟1/4という配分になります。
しかし,この件ではCさんが養子となっていたので,妻Aさん1/2,養子Cさん1/2の配分となり,AさんとCさんの協議の結果,「基本的に法定相続分にしたがって配分してほしい」ということであったため,その内容の「遺産分割協議書」を作成しました。
2 なお,妻Aさんの強い希望で,Bさんの遺産の確認やその取得の手続(土地建物の相続登記手続,預金の引き出し,株式の売却,保険金の支払い受領等)は,全て弁護士である私の方で行ってほしいとのことでした。
そのため,全ての手続を私の方で行い,不動産以外は全て現金化し,これを「遺産分割協議書」に基づき,2人に配分致しました。
不動産については,私の事務所と提携している司法書士に相続登記手続を行ってもらいました。
また,相続税の申告については,当事務所の税理士が依頼を受け,処理しました。
本件のような場合,法律的には,妻Aさんと養子Cさんのみに相続権があります。
しかし,夫Bさんの病気や,夫Bさんのご兄弟はAさんとBさんを離婚させようと弁護士に依頼した途端にBさんが死亡してしまったこと等から,妻Aさんの方では,正直,どのような攻撃を受けるかわからないということで,私の方に依頼することになりました。
その結果,穏便に自分と娘の権利が確保され,法律上の遺産分割だけではなく,不動産の登記手続,さらには,相続税の申告手続など,全ての手続が私の方の事務所で処理できましたので,非常に喜んで下さいました。
3 この間,夫Bさんの代理人弁護士として,妻Aさんに対して通知を送付してきた弁護士から,夫Bさんの「死亡診断書」を送ってほしいとか,どこの寺に埋葬したかを知らせてほしい等の依頼が,私の方になされました。
私としては,亡くなった夫Bさんの代理人弁護士が,新たにBさんのご兄弟の代理人となり,このような連絡がなされたのであれば,妻Aさんの意向を確認したうえで,出来る限りの事実を連絡するつもりでおりました。
しかし,この時点では,委任者であるBさんは死亡しており(死亡により,委任契約は終了します。),単なる「弁護士」からの問い合わせということであったため,私の方では「どなたの代理人として請求されるのかを書面で明らかにして戴きたい」と連絡をしたところ,その後,何らの連絡もなくなってしまいました。
4 また,夫Bさんの死亡直後,以前からの知人であった方が,夫Bさんが亡くなり,妻Aさんと養子Cさんが不動産等を相続するということがわかった途端に,しつこく妻Aさんに接近し,妻Aさんを不動産業者へ連れて行って不動産を売却させようとしたり,お金を貸してほしいと要求したりしていました。
妻Aさんは,知人の意図を察して,何とか遠ざけようとしていましたが,しつこく連絡が来るような状況でした。
しかし,遺産分割についても弁護士が介入したことから,妻Aさんは知人に対し,「全て弁護士に任せている」と言い,私の方は,その方からの問い合わせに対し,「親しい友人と言われても,第三者に対して,依頼された遺産分割の進捗状況等は一切お話しすることはできない」と拒絶することを何回か行い,最終的に,この知人の接近を排除することができました。
このことも,妻Aさんは喜んで下さいました。
◆ 弁護士のコメント
妻Aさんと夫Bさんが,特別な経緯があったとはいえ別居中であり,なおかつBさんに弁護士がつき,離婚調停の申立をすると通知してきていた微妙な時期に,夫Bさんが死亡してしまったことから,妻Aさんとしては,弁護士に入ってもらい,きちんとした形で処理しないと,夫Bさんのご兄弟から色々な要求がなされたり,また,どのように言われるかわからないという不安から,私の方に依頼したものと思います。
その意味では,本件は弁護士として,妻Aさんの期待に十分応えられた事案だと考えています。
また,当事務所の特徴として,税理士も在籍しており,司法書士とは提携していることから,遺産分割や相続については,当事務所で全て解決することが出来るので,依頼者の方からは,「助かります」とよく言われています。