妻(母親)が別居時に子を連れて実家に戻ることの法的問題
- 2017年11月09日
- 家族・親族間問題の事例
【事案の内容】
県民合同法律会計事務所の弁護士に法律相談いただいたのは,千葉市内に住む40歳代の女性でした。
約10年前に夫と結婚し,夫の実家のある北九州市に転居しました。
その後,ふたりの男の子を授かりました。
御相談いただいた時点で,長男様が小学6年生(12歳),次男が小学1年生(6歳)でした。
長年にわたる夫のモラハラ(男尊女卑の考えに基づく暴言,無視及びものにあたる等)を理由に離婚を決意し,その旨夫に告げました。
夫は離婚することには応じましたが,ふたりの子どもの親権は絶対に渡さないと譲りませんでした。
その後,夫婦で話合いの機会を持とうとしましたが,夫はこれを拒否し続けました。
夫は,同居したままの状態で,御相談者に無断で,福岡家庭裁判所小倉支部に離婚調停を申し立てました。
御相談者は,同居し,普段通りの生活をしながら離婚調停を行う夫に強い違和感を感じ,そのような夫と同居していることに強い精神的ストレスを感じていました。
離婚を決意した後,ふたりの子どもの小学校転校手続(北九州市内の小学校から千葉市内の小学校への転校)を終え,別居に備えていました。
また,最小限の荷物をまとめていつでも別居できるように準備しておきました。
そして,夫が仕事で留守にしている昼の間に,夫には何も知らせずに,ふたりの子どもを連れ,まとめておいた荷物を持ち,飛行機で博多空港から成田空港まで移動し,実家に引っ越しました。
その後,夫は,御相談者に対し,子の監護者の指定及び子らの引き渡しを求めて,千葉家庭裁判所に審判を申し立てました。
審判が申し立てられたことを知って,法律相談を頂きました。
【事案の解決】
本審判では,御相談者が夫に何も告げないまま,ふたりの子どもを連れて千葉市内の実家に引っ越し,別居を開始したことが問題となりました。
子どもたちには,住み慣れた家があり,親しい友だちや先生もいたのに,別居したことで,その友だちや先生と会えなくなり,生活環境を変えてしまったことが,監護者としての適性を疑わせると判断される可能性がありました。
監護者は,子と一緒に生活し,子の世話をし,面倒を見る者を意味します。
裁判所に監護者として指定されるためには,子の利益のために最善の選択をできる者だと認めてもらう必要があります。
監護者としての適性を疑わせる事情があれば,監護者として指定してもらうのは難しくなります。
本件では,夫と御相談者は子どもたちを大事に思っており,子どもたちに対する愛情は,夫と御相談者で差がありませんでした。
また,監護者を助ける監護補助者の有無や適性,収入面でも,夫と御相談者で差がありませんでした。
そこで,上記問題が監護者の指定を分ける分水嶺となったのです。
本件で,別居のきっかけを作ったのは,夫でした。
夫が,御相談者との話し合いの機会を持とうとせず,同居中にもかかわらず,離婚調停を申し立て,それを契機に妻が強い精神的ストレスを感じて別居するに至ったのでした。
このことを裁判所に強く主張しました。
その結果,裁判所に同様の判断をしてもらい,夫の請求は認められませんでした。
【弁護士のコメント】
親権をめぐり離婚の話合いが決裂し,妻が子を連れて実家に帰ったケースでは,大半のケースで,夫が妻に対し,監護者の指定と子の引き渡しを求めて審判を申し立てます。
同時に,これらの審判の保全処分を求めるケースも多いです。
そして,これらの申立ての中で,夫は,妻が子を違法に連れ去ったと主張することが多いです。
子どもを連れて別居する際の態様如何では,違法な連れ去りを認定され,審判で不利な事情として斟酌されることがあります。
したがって,子どもを連れて別居する際には,十分な思慮をもって慎重にことを運ぶ必要があります。
法的に問題のない態様で別居するためには,正確な法的知識に基づく判断の他,事案ごとに許容範囲を判断するための経験が不可欠です。
県民合同法律会計事務所には,千葉の皆様から法律相談頂いた35年以上の実績があり,この間に培われた経験は,きっと皆様のお役に立てると自負しております。
別居を御検討中の方,監護者の指定と子の引き渡しを求めて審判を申し立てることを検討されている方,これらの保全処分を申し立てるご予定の方,これらの審判・保全処分を申し立てられた方など,離婚に際し子の親権者と指定されたいとお考えの方は,ぜひ法律相談下さい。
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