結婚期間中に購入した自宅のローンが残っている状態で離婚する場合の注意点
- 2017年10月04日
- 不動産問題の事例, 家族・親族間問題の事例
◆ 事案の内容
御相談者は,40代の女性。20年前に夫と婚姻し,15歳になるひとり娘を授かっています。
3年前に夫が浮気し,別居するに至りました。
別居した直後に,夫から「離婚したい」と申し入れがありました。
御相談者(妻)は,結婚後も仕事を続けていましたが,離婚後の生活の心配があり,離婚することを決意できずにいました。
婚姻期間中に形成された財産としては,婚姻後に購入した自宅マンション(夫単独名義で登記)だけしかなく,預貯金はほとんどありませんでした。
自宅マンションの代金4000万円は,夫が住宅ローンを組んで支払いました。
住宅ローンは,御相談時で2000万円残っていました。
御相談者の御意向としては,「離婚後も自宅マンションに住み続けたい」,「住宅ローンは御相談者が引き継いでもよい」とのことでした。
前記御意向を実現するには,どうしたらいいかというのが御相談内容でした。
◆ 事案の解決
婚姻時に形成した夫婦共有財産について,どの財産を誰にどのように分けるかは,まずは,当事者が話し合って決めることができます。
そこで,まずは,
「御相談者が,財産分与として自宅マンションの譲渡を受けられるよう話し合って欲しい」
「同時並行で,住宅ローンを組んだ銀行に連絡をして,債務者を御相談者とする住宅ローンに切り替えることができるか確認してください」
とアドバイスさせていただきました。
このアドバイスにしたがって,御相談者は,夫と協議し,財産分与として自宅マンションの譲渡を受けられることになりました。
銀行にも連絡し,自宅マンションに抵当権を設定すること,御相談者の父親が連帯保証人になることを条件に,御相談者を債務者とする住宅ローンに切り替えることができました。
◆ 弁護士のコメント
婚姻時に形成した夫婦共有財産を,離婚するに際して分けることを,「財産分与」といいます。
住宅ローンが残っている自宅について,財産分与する場合,複雑な問題が生じます。
本件では,結婚後に住宅ローンを組んで4000万円で購入した自宅マンションがあり,このマンションの財産分与が問題になりました。
法律的に厳密に検討すると,4000万円の住宅ローンが,離婚時には,2000万円にまで減額しています。
仮に,離婚時におけるマンションの査定価格が3000万円であれば,残ローンを差し引いても,1000万円の価値が残ることになります。
この1000万円については,婚姻期間中に形成した財産として,財産分与の対象になります。
具体的には,財産分与を理由に自宅マンションを取得する配偶者が,他方配偶者に500万円の代償金を支払わなければなりません。
自宅マンションを夫名義のままにするなら,夫が御相談者に500万円を支払い,逆に,御相談者(妻)名義にするのであれば御相談者(妻)が夫に500万円を支払うことになります。
他方,財産分与であれ,不動産の名義変更をするには,抵当権を設定している銀行(住宅ローン会社)の承諾が必要になります。
通常,不動産の所有者が住宅ローンの債務者になりますので,夫名義から御相談者(妻)名義に所有者を変更するには銀行の承諾が必要になり,住宅ローンの債務者を夫から御相談者に変更するローン切り替えが必要になります。
ローン切り替えの可否を判断する際には,新規のローンと同様の信用調査が行われます。
本件では,御相談者が婚姻後も仕事を続けていて安定した収入が確保できたこと,連帯保証人に比較的資力のある御相談者の父親の承諾を得られたことから,ローン切り替えが認められました。
そして,離婚の原因が夫の浮気にあったことから,御相談者には夫に対する慰謝料請求権が発生していました。
婚姻後20年が経過し,未成年の子があり,浮気が原因で離婚するに至った本件では,慰謝料500万円は,必ずしも高額ではありません。
そこで,御相談者には,上記法律上の取扱いについてご説明した上で,先述のアドバイスをさせていただきました。
結論として,御相談者が自宅マンションを財産分与により取得し,本来支払うべき代償金500万円については慰謝料と相殺することになりました。
以上の通り,住宅ローンが残っている自宅について,財産分与する場合,慰謝料請求などもあいまって複雑な問題が生じます。
複雑な問題を的確に解決するには,法律知識のほか,経験や実績が不可欠です。
当事務所には30年以上の実績があり,経験・ノウハウが集積しております。
住宅ローンが残っている自宅の財産分与等,複雑な問題が生じる可能性のある事件についても,的確にアドバイスさせていただき,迅速な解決をお手伝いいたします。
まずは御相談ください。