債務整理事件(時効/借金)
- 2015年05月27日
- 借金問題の事例
◆ 事件内容
依頼者(千葉県在住)は、消費者金融A社から、平成13年頃に金銭を借り入れました。
その後、平成14年9月30日に一部返済したものの、完済には至らず、
さらにその後、A社から、平成18年頃まで「請求書」が送られてきたものの、一切放置していました。
ところが、平成27年になり、B社から、「B社がA社の債権を譲り受けた」として、残元金30万円と利息100万円の「請求書」が届きました。
なお、そこには「17万円支払ってもらえれば和解しても良い」との趣旨のことも書かれていました。
しかし、依頼者は、これも無視していました。
そうしたところ、平成27年3月になり、B社から「130万円を支払え」という裁判を起こされ、依頼者のもとに、大阪簡易裁判所から「呼出状」が届きました。
このような事態になり、依頼者は、慌てて、指定された裁判の期日に、大阪簡易裁判所まで出頭しました。
なお、裁判において、依頼者は裁判官から、
「場合によっては時効になっているかもしれないので、弁護士に依頼して、時効の主張をしたらどうですか」
との助言を受けました。
しかし、依頼者は、この助言があったにも関わらず、すぐに動きませんでした。
そして、2回目の裁判期日の前日になり、慌てて、「何とかならないか」と相談に来ました。
◆ 解決内容
裁判を翌日に控えているため、B社から提出されている書面などを参照しながら、直ちに「準備書面」を作成しました。
その内容は、次のとおりです。
1 消滅時効の主張
被告は、原告が主張するとおりの金銭の借入を行っていたが、その最終支払日は平成14年9月30日である。
本件債務は、商事債務であり、商法522条により、5年間行使しないときは時効によって消滅する。
従って、平成14年10月1日から5年後の平成19年9月30日の経過により、本件債務は時効により消滅した。
被告は、本書面において、上記時効の援用の意思表示をする。
2 結論
原告の請求する債権は、前記のとおり、時効により消滅しているので、原告の請求は根拠がなく、本訴訟は棄却されるべきである。
このような内容の「準備書面」を作成して依頼者に渡し、依頼者に、翌日、大阪簡易裁判所に出向いてもらいました。
裁判当日、当方の書面が提出されたこともあり、原告であるB社は、「検討させてほしい」ということでした。
次回の裁判期日も決まりましたが、結局、B社は、数日後に訴えを取り下げました。
◆ 弁護士のコメント
最初にB社から通知が来た時点でご相談いただければ、弁護士としてB社に対し、
「本債務は時効により消滅しており、その時効の援用をする(時効は、時効により自動的に債権が消滅してしまうのではなく、民法第145条により、債務者が時効の援用をすることにより、消滅するものと規定されています。)」
との内容の書面を送付するだけで、解決したはずです。
この間、依頼者は、自分に不都合な事に目を瞑り、「無視していれば、何とかなるのではないか」と安易に考え、ぎりぎりまで、きちんと対応しませんでした。
そのため、会社を休み、高額の交通費を支払って、大阪簡易裁判所まで2度も出向かざるを得なくなりました。
しかも、その間、多額の支払いを命ずる「判決」が出てしまうのではないかという不安につきまとわれていました。
この件では、依頼者に対し、「これからは、不都合な事から目をそらすことなく、まず現実をしっかり受け止め、専門家に相談するなどして、解決方法を見出すようにしてください」と忠告しました。
このことは、病気でも、法律的な問題でも、同じことが言えると思います。
早期発見(認識)、早期治療(対応)が大切です。