離婚に際し,父親が親権者になった事案
- 2015年03月09日
- 家族・親族間問題の事例
◆ 依頼の内容
依頼人(男性)と相手方は,約13年間,婚姻生活を行っていました。
2人の間には,10歳になる男の子もいました。
依頼人によれば,妻である相手方は,精神的に異常と思われるほど過敏であったり,子どもの世話も十分行わず,子どもに朝食を食べさせずに学校に行かせたり,時々,錯乱しては暴れ出すということもあったそうです。
最終的には,相手方(妻)は,子どもを置き去りにしたまま,実家に帰ってしまったということで,離婚と,子どもの「親権者」となりたいという依頼でした。
◆ 依頼の解決
1 私の場合,最初に,夫婦のこの間の経緯について,依頼人に書き出してきてもらいます(非常に詳しく書かれる方もいれば,ごく簡単に書かれる方もいます。)。
そのメモをもとに,相対で依頼人からお話を聞き,様々なことを質問ながら,協力して「陳述書」という書面を作成します。
この「陳述書」は,第三者が見ても,依頼人夫婦のこの間の経緯が十分にわかるように作成します。
こうすることにより,依頼人自身は自分の結婚生活を冷静に振り返ることができるようになり,また,代理人である私も,依頼人や相手方(依頼人の配偶者)のことを相当程度理解することができるようになります。
2 離婚事件は,「調停前置主義」といって,いきなり裁判を起こすことはできず,必ず調停の申立をしなければなりません。
そのため,本件においては,調停での話し合いによる成立(解決)は困難であるとは思っていましたが,法の定めに従い,離婚調停の申立を行いました。
3 調停では,やはり,「親権者」について,父親(依頼人)にするのか,母親(相手方)にするのかが問題となりました。
その結果,双方譲ることがなかったため,調停は「不成立」となりました。
一般的に,財産分与や慰謝料,養育費というような問題は,調停による話し合いにより解決する場合が多いです。
しかし,子どもの親権を両親が争う場合は,どちらも譲らず,調停が「不成立」になってしまう場合も多いです。
本件でも,親権を双方が争ったため,調停は不成立となり,改めて裁判をせざるを得ないこととなりました。
4 離婚の裁判で,家庭裁判所は,子どもについて,
・ 「今後,それぞれの親がどのように養育しようと考えているのか」というような書面
・ それぞれの収入を明らかにする資料
・ 家庭環境についての資料
・ 子どもの通知表など,学校関係の資料
を出させるなどしました。
そのうえで,家庭裁判所の調査官が,それぞれの家庭を訪問し,子どもと直接話をするなどして(本件では,子どもは依頼人のもとで生活していました。),調査官の「意見書」が提出されました。
この調査官の「意見書」が提出されると,ほぼ,裁判所は,これを尊重することになります。
その結果,本件では,相手方である母親にも面会交渉権を認めるという形で,父親である依頼人が長男の親権者になるということで,話し合いによる解決がなされました。
◆ 弁護士のコメント
子どもが幼少期(小学校入学前)の段階では,よほど例外的な場合以外は,母親が親権者となる場合がほとんどです。
私の30年以上の経験でも,3歳の子どもの親権者が父親になったのは,1件だけでした。
本件では,子どもは10歳となっており,裁判所においても,父母それぞれの家庭環境や収入,これまでの経緯,子どもの養育に対する姿勢などを総合して,「父親が親権者となる方が好ましい」という意見を出しました。
しかし,これも,母親が,父親に比べて,あまりに子どもを養育するには不向きな精神状態であり,また,その行動も,母親としての自覚がある行動とは到底言えなかったことから,裁判所が,父親を親権者と認める意見を出し,それに基づき,母親もやむを得ないとして,和解が成立したものです。