盗撮事件 1


◆ 事案の概要

Aさん(男性)は、大型店舗内で、買い物に来ていた主婦のスカートの中を盗撮しました。

その結果、それに気がついた周囲の人が騒ぎ出し、Aさんはその場で現行犯逮捕され、勾留されてしまったという事案です。

 

◆ 解決内容

当職がAさんの弁護人になったとき、Aさんは、既に逮捕・勾留されていました。

そのため、当職は、なんとか被害者と連絡をとり、被害弁償を行って「示談」をする必要がありました。

このような場合は、担当検察官を通して、被害者の意向を確認してもらい、

被害者が「示談に応じてもよい」ということであれば、弁護士の連絡先を被害者に伝えてもらう、

あるいは、

被害者の了解を得られれば、弁護士限りで連絡先を教えてもらう

という方法をとるのが通例です。

この件においては、検察官から被害者に対して、当職の電話番号を伝えてもらいました。

その後、被害者から連絡はいただけたものの、被害者としては「慰謝料の支払いなどを望んでいない」とのことで、示談まで至りませんでした。

そのため、当職は、

・ この間の示談に向けて努力した経過

・ Aさんの勤務態度や家庭の状況

・ 家のパソコンに類似事案を思わせる写真などが一切なかったこと

などを記載した「報告書」を作成し、Aさん本人の「反省文」とともに、検察官に提出しました。

この件では、示談は成立しませんでしたが、Aさんに同一事犯を繰り返していた状況がなく、仕事や家庭生活も真面目に行っていたことに加えて、被害者の方も強く処罰を求めなかったものと思われ不起訴処分で終了しました。

 

◆ 弁護士のコメント

盗撮事案では、通常は、「初めての犯行」ということはなく、家のパソコンの中に同種犯行の写真を取り込んでいる場合が多く、自宅の捜索によりパソコンを押収され、その事実が明るみに出る場合も多いです。

しかし、この件ではそのような事実はありませんでした。

また、当職の経験では、「痴漢」の場合は、身体的な接触があることから、被害者の方は慰謝料の請求をされる場合が多いのですが、「盗撮」については、そのようなことがないためか、比較的、慰謝料の請求がなされず、そのため逆に、示談を成立させることもできないということがあります。

正直なところ、弁護士の立場からみると、被害者の方には幾分なりとも慰謝料を請求していただき、示談を成立させた上で「被害届」を取り下げていただく方が、不起訴処分にしやすいです。

もっとも、盗撮の被害者の方は、非常に気持ちの悪い、不愉快な思いをしており、「金銭を要求することで、犯人と関わりを持つことになるのは嫌だ」という、複雑な思いなのだろうとも思います。