会社(法人)の破産 1
- 2015年01月09日
- 事業・労働問題の事例, 借金問題の事例
◆ 事件内容
依頼人の会社は,米や飼料などの卸売り並びにすず虫などの養殖を業とする会社でした。
しかし,ゲーム機器の影響による子どもの昆虫離れ,さらには,東日本大震災によりほとんど全ての契約が解除され,納品できない状態に至り,事実上,倒産しました。
債務額は,銀行及び取引先を併せ,約5700万円でした。
一方,資産としては,わずかな現金,預金,出資金,売掛金及び不動産等がありました。
なお,依頼人自身は,保証債務を含めると,約6700万円の債務を負担していました。
◆ 解決内容
本件事件の会社は,一年半程前に,既に事実上倒産し,手続が放置されていました。
しかし,その後,依頼人の夫である代表者が死亡したこともあり,法的手続が取られていなかったために,依頼人に対して請求が続いていました。
依頼人としては,これ以上は耐えられず,正式に破産申立手続を取ることになりました。
ご相談及びご依頼を受け,まず,依頼人に,破産手続を取った場合の流れ,また,会社と代表者個人の手続の違いなどを十分に説明しました。
そのうえで,判明している全債権者に対し,書面にて,この間の経緯,破産手続を取らざるを得ない事情を説明し,現在の債務額及びこれに対する資産を明らかにして,近々,管轄裁判所に破産申立を行うということ及び今後の連絡一切は弁護士宛に行うようにとの内容を記載した「通知」を代理人弁護士として送付しました。
その後,法人(会社)の破産と個人の破産,それぞれ必要な書類を用意し,管轄裁判所に破産申立を行いました。
法人の破産については,必ず,裁判所の選任する「破産管財人」を付さなければなりません。
しかし,現在,小規模な法人破産については,「少額管財」として,
管財人費用 法人分20万円
個人分10万円
の合計30万円を裁判所に予納することにより,管財人を付してもらえることになっています。
以前は,会社は放置して代表者だけ破産するということも,裁判所は認めてくれていました。
しかし,最近は,代表者が破産するときは,会社も破産手続を必ず取るように命じられます。
このようにしないと,債権者は,税務上,「貸倒損金」として計上できないからです。
本件事件についても,管財人が選任されました。
管財人は,会社の資産と負債について,十分に調査したうえで明らかにし,一定の資産がある場合には,これを全て現金化して,ごくわずかであっても各債権者に配当することになります。
この点は,個人についても同様です。
配当については,債権額に比例して配当されます。
但し,税金などは,「優先債権」として一般の債権者に優先されて支払われます。
そのため,滞納している税金があるような場合は,幾分の資産があったとしても,全て税金の支払いで処理されてしまい,一般の債権者に配当がないということもあります。
本件事件においては,管財人の費用を賄うだけの最低のものしかなく,債権者への配当は全くできませんでした。
このような場合,会社については,「破産廃止決定」がなされ,それで終了します。
また,個人については,免責制度があり,管財人が調査した結果,財産を隠したり,乱費したようなことがなければ,裁判所は「免責決定」をします。
この決定により,破産者は,借金が1000万円残っていようが,1億円残っていようが,法的に支払う必要がなくなります。
また,同時に,破産者としての権利の制約も全て解消されます。
本件の場合,法人の方は,申立から3ヶ月半程度で破産廃止となり,個人は,申立から9ヶ月程度で免責決定となりました。
◆ 弁護士のコメント
弁護士としては,債務(借金等)を抱え,どうしようもなくなってしまった場合には,逃げ出したり,その場限りの処理でごまかすことなく,法律の力を借りて,正式に破産手続を取ることがベストだと思います。
「破産」と聞いただけで,耐え難く思われる方も多いと思いますが,実際に手続を取った方のほとんどは,「手続をとって本当に良かった」という感想をお持ちです。
多額の債務を抱え,どうしようもない時には,勇気を出して弁護士に相談することを強くお勧めします。