横領事件
- 2014年12月01日
- 刑事事件の事例
◆ 事件内容
病院で経理の仕事をしていた依頼人が,平成15年8月頃から平成19年5月頃までの間に,病院のお金合計約4652万円を使い込み,憧れていた演劇俳優に貢いでしまったことが発覚し,病院を解雇されると同時に刑事告訴された事案
◆ 解決内容
とりあえず,刑事事件として,私は依頼人から刑事弁護人に選任されました。
金額が多額であったため,被害弁償を直ちに行うことは困難でしたが,依頼者の親族の協力も得て,とりあえず頭金として相当額を支払い,あとは分割払いを行いたいと病院側の弁護士に交渉し,話し合いました。
その後,依頼人は,警察署や検察庁に何度も呼ばれ,どのような手段で横領を行ったのかを正直に話しました。
しかし,病院自体の会計処理が杜撰であったこともあり,刑事手続きは一向に進展しない状態となりました。
そのため,しびれを切らした病院側の弁護士は,民事事件として依頼人を訴えるという手段を取りました。
その額は,依頼人が正直に計算して算出した,前記約4652万円の倍以上の,1億3158万円という莫大な金額でした。
当職は,民事事件についても代理人となって争い,1億円を超すような金額を依頼人が横領したとするならば,それを明確な証拠をもとに立証するように求め,民事訴訟も難航しました。
その間,検察庁から「検察として明らかに立証可能な627万円を支払えば,刑事事件としては,立件を控える」という趣旨の連絡が入りました。
当方としては,起訴されることはなんとしても避けたいため,依頼人と相談し,親族の協力を得て,627万円を支払い(供託),刑事事件として起訴されることは回避しました。
また,民事事件における損害賠償請求については,病院の代表者が替わったこともあり,最終的には,当方が認めている4652万円の1/2から,供託した627万円を差し引き,さらに,和解日に支払った100万円を差し引いた1599万円について,毎月5万円ずつ分割で支払い,20年後に約400万円を支払うことで,和解が成立しました。
◆ 弁護士のコメント
当職の体験上,横領事件については,警察も,事件化するためには詳細な調査を行う必要があり,本人が認めているからというだけで,逮捕勾留することはなかなかできません。
横領の形態によっても違いますが,調査に1,2年を要し,事件が発覚した後2年も経ってから逮捕されたケースや,当初会社が告訴し,警察が動き出したものの捜査が進まず,そのまま事件化されないケースもあります。
しかし,弁護士としては,依頼人が,「間違いなく横領している」と相談に来られた場合は,まずは被害弁償を行い,刑事事件にならないように目指します。
但し,多額の横領をした依頼者が,横領した金額を一括で返済することは困難であり,結局,会社側に,他の従業員との関係もあって,ケジメをつけるために刑事告訴されてしまう場合も多いです。
いずれにしても,周囲の協力を得るなどしながら,横領してしまった金額を賠償することが,最も重要です。
全く被害弁償をしないままであれば,実刑になる確率は極めて高いです。